GAME1 (T1)オリアナ&シンジャオ vs アカリ&ウーコン(TES)
T1vsTES昨年の結果~ファン&アナリストの勝敗予想

T1は過去の全WorldsでBO5環境であればLPL代表チームに対して現在無敗の12連勝中。それもあってファン投票ではT1勝利を予想するファンが86%という結果に。

アナリスト予想はファン投票ほどの偏りはなく15対7でT1有利、大体7割といった状況。とはいえ多くの人がT1勝利を予想している状況と言えます。
そんな雰囲気の中で注目のバンピックはこちら

ブルーサイドのT1は1stピックにMIDオリアナを選択。シンジャオやジャーヴァンが空いている状態なのでオリアナ&シンジャオorジャーヴァンといった強い構成は避けられないと踏んだTESは返すピックでJGウーコンとMIDアカリを選択。集団戦ではなくアサシンでキルを拾っていく方向でアカリを選択し、恐らくシンジャオが出てくると見て対抗できる強いファイターJGとしてウーコンを当てた形となります。
ピック後半はTES側がTOP先出しでカサンテを当てたところにT1はモルデカイザーを当てます。これはカサンテへのカウンターというよりはJGのウーコンに対して強い対抗力を持つ、という意味で当ててきているイメージ。実際にドラゴンファイトなどでJGを連れ去ってしまうとフリーでオブジェクトが取れますし、集団戦でウーコンのRが炸裂する前に冥界に連れて行くことも可能で全体として非常に集団戦~オブジェクトファイトが強い構成が取れたT1と言えます。その後、TES側はSUPにカルマを選択してバンピックは終了。
TESは集団戦&オブジェクトファイトを避けてFakerのキルに注力

GAME1は双方キルを殆ど出さずに中盤まで進展します。オリアナ&シンジャオが揃いモルデカイザーのRも所持しているT1陣営とのドラゴンファイトはTES側としてもあまりやりたくなく、アカリのRを基点としてオリアナを倒すか少なくともRを吐かせてから集団戦をしていきたい、といった動きに見えました。
TOPレーンでFaker選手のオリアナが何度かヘルスローに陥ることはありましたがSUPのKeria選手がリデンプションでその都度回復支援することでデスはしっかりと回避。ビルドもしっかりとロッドオブエイジス(ヘルスを多めに保てる耐久力に長けた装備)を1コア目に積みアサシン耐性を高めて試合を進めて行きます。
その後大きな破綻もなくGAME1は終始T1ペースで進展

バンピックの段階で集団戦に重きを置かれたT1構成。アサシンのアカリにキルが集まることもなく、突出してダメージキャリーする能力が高い訳でもないシヴィアをADCに置いたTESはそのままオブジェクトをほぼ全て押さえられる形でGAME1を落とします。
アカリかウーコンにある程度ゴールドが集まりバーストダメージが上がればまた少し違う展開も見られたと思いますが、しっかりとそのリスクを考慮してローリスクでオブジェクト重視で試合を進めたT1が堅実にまず1ゲーム先取します。
GAME2 TESのコーキ&アンベッサを捕まえられるか?

GAME1をオリアナシンジャオで安定的に勝利したT1に対して流れを変えたいTESはブルーサイドから1stピックライズを選択。返すT1はMIDに後出しでガリオを出し、ラストピックはADCカイサでバンピックを締めます。
TES側はTOPアンベッサやADCコーキがブリンクを持ち捕まえにくい印象ですがT1側はジャーヴァンのRとカミールのR、そしてガリオのタウントなどのCCをチェーンしてしっかり落とせるよう名構成を組みます。ジャーヴァンのRは単発でコーキ相手に打つと逃げられてしまいますので他のベタ足チャンプに打つか、カミール&ガリオに繋げる形で先ずコーキのWを落とさせる意図で打ち込むか、状況判断が重要になります。
いずれにせよTES側でキャリーが複数育つと抑えきるのが難しくてT1としては厳しい展開に、逆に、仮に育つのが一人までであれば如何様にもCCチェーンで封殺できる、そんな構成に見えます。個人的にはライズとコーキにどのくらいゴールドが集まるのか、を注目したいGAME2と感じました。
すべては計算済み。予定調和のFakerワールド
試合は中盤まで拮抗しつつややT1がドラゴン有利といった展開。TESのADCコーキにも2キル入りコーキ&ライズのレイトスケールキャリーにゴールドを集めるべくTESもしっかりとファームを進めて行きます。しかし、、、T1の構成はたとえコーキ相手でもゆったりとしたファームを許しません。

↑MIDタワーをシージしつつファームしていたコーキにまずはJGのジャーヴァンがRで囲い込み。コーキはこの後WでブリンクアウトしつつSUPナミのRでディスエンゲージを図りますが、、、

続くカミールのRで範囲外に出れないようにコーキを封殺、そこへFaker選手のガリオがRで飛び込みノックアップ&タウントを入れつつ味方のタワーダメージを吸収しようと飛び込みます。

命からがらとわずかなヘルスでタワー下へ逃げ込むコーキに対して、ガリオの無情なQが撃ち込まれます。この画像の直後、ヘルスがミリ単位だったコーキは撃沈。この一連の流れから見ても、少しでも浮いた位置にいるキャリーをT1は決して逃がさないという圧力が伺えます。
ブリンクを持ったコーキでさえこの圧死の仕方であることを考えると、ブリンクを持たないSUPナミがオブジェクト周りの視界を押さえることも非常に困難であることが予想されます。
大きく勝敗を分ける分水嶺となったアタカンファイト

ドラゴンは先行されつつもタワーを先に3本割りボットレーン周りの主導権を押さえたTES側はそのままアタカンを奪取できると先に触り始めます。MIDのライズはMIDレーンに残っていますがRを使ってポータルで合流できると見込んでのアタカンタッチ。しかしT1のJG、Oner選手はカウンターJGで敵側陣営に入っておりかなり早い段階でこのアタカンタッチに気づきます。ラッシュできるほど簡単な中立モンスターでもないため、アタカンがTESのヘルスと防御力を削って疲弊させるのをじっくり待ちつつ、他のT1プレイヤーにカウンタープレイのセットアップのため、MIDのFaker選手のガリオ以外はアタカンに体を寄せ始めます。(ガリオはテレポートもRもあるため、最後までTOPレーンを押してからゆっくりリコール。)

アタカンのヘルスを数割削った時点でカミール・カイサ・ニーコの3人がプレッシャーをかけたことでTESはアタカンを中断、反転してT1陣営へのカウンターを狙います。アンベッサのRは不発に終わりましたが離れていたMIDライズがRのポータルで最前線に合流、一方T1はガリオとジャーヴァンがやや離れており局地的ではありますが5対3の状況。
完全な意思統一と共に理想的な反転

前の画像で本当に瞬間的にではありますが5対3でともすれば危ない状況に陥りそうだったT1陣営、ここから舞台は本当に一瞬で完全に様相を逆転させます。
SUPニーコがロケットベルトでTES陣営が4人固まっているところへ前方ブリンクインしてからのRを放ちコーキ・トランドル・アンベッサの3名にノックアップからのスタンを入れます。この時点でコーキは逃げるためのブリンクスキルを消耗している状態。

追撃を切るためにTESのSUPナミがRでCCスキルを打ちますがT1のADC、Gumayusi選手のカイサはこのナミR(赤丸部分)を避ける形でRで一気にTES側の最後尾までブリンクイン(黄色丸部分)。同時にカミールもRでコーキを拘束します。
この際、T1のSUP、Keria選手の本当に素晴らしかったのが単なるディスエンゲージのためだけにRで時間を稼いだわけではなく、本当に攻撃的に敵の後衛に向かってブリンクインしながらRを放った点、でした。
これによって戦場がBOT側に移動し、やや距離の遠かったT1のJGジャーヴァンが合流しやすくなる+TESのMIDライズが放ったポータルによる移動をキャンセルして結果としてライズの合流を遅れさせた、ということで実質的には4対3、しかも3人にスタンを当てているのでその後の合流への時間を稼ぎつつ、コーキのWやナミのRといった重要スキルを落とさせる、という攻めと守りを完全に同時にこなしたスーパープレイを演出した形となります。
T1の凄いところは、これがKeria選手の頭の中で描かれたただの理想図ではなく、瞬時にカイサとカミールがRで合わせ、タイムラグなく合わせることで理想を現実のものとする意思統一の高さ、ビジョンの共有力にあると言えます。あの状況からこれだけの反転を瞬時に見せられると、正直どのチームもお手上げなのではないでしょうか、、、

↑あとはお決まりのガリオRからの殲滅戦となります。重要なリソースをほぼ吐き出したTESに対して元気なガリオとジャーヴァンが合流したT1はこの後、最前線でフロントを維持したニーコとカミールはデスしますが、代償にTESの全員をキルしてACEと共にアタカンを獲得します。

GAME2はその後、このファイトで大きくゴールドが入ったカイサが舞う形でバロン獲得から27分にGAME-ENDへと向かいます。ヤマ場としてはこのアタカンファイトが完全に分水嶺となったGAMEと言えるかと思います。

↑構成やチームファイトの動き云々もあるかと思いますが、このノックアウトステージに入ってからはFaker選手の気合の入り方と集中力の高さも非常に印象的です。このGAME2においても落とし切れなさそうなコーキを確実に落とす視野の広さと冷静さ、もさることながら、ガリオをロケットベルトから完全なAP構成にしてダメージをしっかりと補完していくチームにおける役割分担の最適化、など様々な面で高いパフォーマンスを見せていました。
GAME2直後に控室に戻っていくFaker選手からは気迫が立ち上り、カメラもなかなか目を離せないようにも見えました。(ので、そのシーンを敢えて上図にて共有(笑)
GAME3 T1はAL戦で実績のあるアッシュ&メル構成

GAME3はブルーサイドTES陣営が1stピックにJGキヤナを選択してスタート。返すT1はTOPサイオンとJGパンテオンを返します。キヤナというアサシンJGに対して確定CCを持ち1v1性能も高いパンテオンをカウンターで当てつつ、しっかりとしたタンクを据えた形。これに対してTOPオーンを同じく強固なフロント役として当てたTESがMIDを先出しでオーロラをピックしてバンピックは後半フェーズに移ります。
ここでT1は先日、対AL戦の最終ゲームを勝ち切ったMIDメルとADCアッシュの組み合わせを選択。しっかりと実績の出ているピックを当ててきたことで会場&ファンの期待も一層盛り上がります。TESはこれに対してドレイブン&ノーチラスという非常にレーン制圧力の高いDUOを選択し、T1がラストピックにレナータを当てる形でバンピックは終了。
全体としてみるとパンテオンのRと確定CCがキヤナやドレイブンにしっかり刺さりそうな構成、と感じました。一方、TES側はオーンRを基点としてオーロラR、ノーチラスR、キヤナRといった強力なRを絡めたウォンボコンボで一気に場を制圧するポテンシャルがある組み合わせでもありますので、T1としてはそこは注意したいところ、と思います。
序盤はTES側はTOPレーンを重要視してガンクヘビーな展開

上図はちょうど2度目のガンク直後のシーン、これを受けてTOPのDoran選手はキルされてしまいますがタワーを受けてTESのTOP、369選手もデスして2度目のガンクは1-1のキルトレード。しかもサイオンはデスした後もパッシブスキルで暫くゾンビになってミニオンの処理ができますので、TOPレーンをガンクするのはあまり得策ではないように感じます。
一般的に、タンクチャンプにゴールドを集めるよりもキャリーチャンプにゴールドを入れた方がチームにとっては戦闘への貢献度が高くなりがちですし、逆に、キルされる側としてもタンクの場合はデスしてもあまり支障なくその後の仕事が可能です。サイオンはただでさえデスしても仕事ができる特殊なチャンプですので。
このゲームにおいてもこの2キルはいずれもキヤナに入っているのでキャリーにゴールドを入れた、という見方も勿論可能ですがパンテオンやアッシュに対してキヤナが育っても無双仕切るイメージはあまり沸かないので、理想としてはオーロラやドレイブンにキルを入れ、逆にガンクでゴールド&ファームを阻害する相手としてもMIDのメルやADCのアッシュを狙う方が正道だったのではないかと。今年のWorlds全体を見ても、LPLのチームは割とキヤナに重きを置いてキルとゴールドを入れる展開が多く見られますが、そのままキヤナがキャリーしてゲームを決められるようなケースは上位チーム同士だとほぼ無い印象です。
そしてGAMEは後半戦。3体目のドラゴンファイトシーンで大勢が決した印象

ゲームは20分を過ぎるころ、キルカウントとドラゴンがいずれもT1が先行する形でリードしているところで3体目のドラゴンファイトが始まります。T1がドラゴンを触っているときにTES側がMID側から本体を当てつつ、裏からオーロラのRで殲滅を狙ったこのシーン。

1枚目のシーンの数秒後、オーロラのRを展開するもT1のキャリー陣は落ちず、逆にTES側で最もキルを拾っていたキヤナは昇天。ドラゴンもT1側が押さえて3ドラGETという展開。

裏から入っていたオーロラも落とされる形でそのまま5対3でMIDタワーも落とします。個々の戦闘における動きや戦術もそうですが、このゲームでTESが最も良くない選択をしてしまったのはやはりTOPを重視してキルが入ったのがオーンとキヤナだけであったこと。オーロラかドレイブンにもう少しゴールドが入っていたら集団戦の圧力、特にオーロラRの破壊力は全く違うものになっていたと思われます。
他方、T1陣営はメルに5キル、アッシュに3キルとキャリー陣にもゴールドを入れつつ、パンテオンも7キル保持している状況。キヤナがいくら育っていてもそれ以上に育っているパンテオンが敵サイドに居た場合、仕事ができないのはLOLプレイヤーであれば想像に難くありません。
GAME3はそのままT1が圧倒する流れでEND。勝利後インタビューはTOPのDran選手

GAME3のその後はというと、TES側としてはなすすべなくそのまま28分にバロンバフと共に本陣を落とされてゲームEND。

GAME3のStatsが上図のような形ですが、こうしてみるとMIDのオーロラにもう少しキルとゴールドを入れられていたら少し流れが変わっていた可能性はありそうです。また、アッシュを見てから後出しとして出したドレイブンですが、やはりスロウが重く、確定CC持ちのパンテオンも見えていた訳なのでブリンク持ちでもう少し楽にスペーシングで切るチャンプを選択していたら、BOTレーンの様相もまた変わっていた可能性があるかと思いました。自分がこの構成でSUPノーチラスでJGがTOPだけ見ていたら、発狂してそうな構成です。まあ、結果論ですが。。。

そして勝利後インタビューはTOPのDran選手。自分は以前のTOP、Zeus選手も大好きでしたが、入れ替わりに入ったこのDran選手も非常に好きなプレイヤーです。常にチーム全体にとっての利益を最大化できるよう、死に役も時には全然こなしてくれますし、積極的にキャリーして欲しい場面では安定感をもってプレイしてくれますし、なによりもFaker選手の意図する戦略への理解度がとても高い気がしています。心なしか、Doran選手が加入した後のFaker選手の笑顔が増えたような、そんな気が勝手にしていたりします(笑)いずれにせよ、T1の快勝で次はいよいよ決勝戦。1週間後の11月9日16時から、LCKチーム同士の最後の決戦を楽しみに待ちましょう。
このゲームは以下の公式Youtubeチャンネルから視聴できます
※記事中の画像も全て公式動画より引用させて頂いております。